夜が更ける頃、町の一角に佇む古いアパートメントの一室で、住人の一人、リョウは洗面台の前に立っていた。水を出すと、なぜか流れが悪い。これが最近の日常で、リョウはその事実に少しずつイライラしていた。プランジャーで何度も何度も詰まりを解消しようと試みたが、効果は一時的で、次第に問題は悪化していった。
ある晩、リョウはとうとう堪忍袋の緒が切れた。怒りに任せてプランジャーを力いっぱい押し込むと、突如として洗面台からは激しい水の渦が発生し、その中から一枚の古びた写真が現れた。写真には、このアパートメントで以前に住んでいたとされる美しい女性が写っていた。その瞬間、リョウは何かがおかしいと感じた。
翌日、リョウはアパートの管理人にその写真を見せた。管理人は顔色を変え、「この写真は…まさか」とつぶやいた。その女性はかつてこの部屋で不慮の事故で亡くなったという。しかも、その事故が起きたのは洗面台でだった。リョウは驚愕し、その後すぐに部屋を引き払った。
新しい住まいで洗面台の前に立つと、水の流れはスムーズだった。しかし、リョウはその水の流れに何かを感じ取った。それは、前の洗面台の流れが悪かったのは、あの女性が何かを伝えようとしていたのかもしれないという感覚だった。その後、リョウはその女性の遺族を探し出し、写真を手渡した。遺族は涙を流し、感謝の意を示した。
時が経ち、リョウはその出来事を思い返すたびに、物事には必ず理由があると感じた。流れが悪い洗面台も、その背後には深い意味が隠されていたのだ。そして、リョウはその事実に感謝し、人々との繋がりの大切さを改めて認識したのであった。